統合リスクマネジメント活動により、グローバルで取り組むコンプライアンスとリスクマネジメントについてご紹介します。
コンプライアンス・リスクマネジメント
「内部統制システム整備に関する基本方針」の中で、当社グループにおけるコンプライアンスとリスクマネジメントについて以下のように定めています。
コンプライアンス
統合リスクマネジメント
当社グループでは、コンプライアンスとリスクマネジメントを統合した対応を行っています。
統合リスクマネジメントの枠組みは、グローバルリスクマネジメント・法務本部長(GRL長)を推進責任者とし、同本部が主管する「オムロン統合リスクマネジメントルール」にまとめ、グループ経営における位置づけを明確にしています。
経営と現場が一体となったリスクマネジメントを推進するため、リスクマネージャを本社機能部門、ビジネスカンパニー、海外の地域統括本社、国内外の各グループ会社で任命(約160名)し、グローバルなネットワークを利用して、日常的なリスク情報の共有、対応の協議などを迅速に行い、社内外の環境変化に対応した対策を現場と経営が力を合わせて実施しています。
主な活動は次の3点です。
推進組織として、GRL長を委員長、主要なリスクマネージャで構成する「企業倫理・リスクマネジメント委員会」を設置し、原則年4回開催しています。統合リスクマネジメントの活動状況については、適宜、執行会議や取締役会に報告しています。
当社グループでは、公正かつ透明性の高い経営を実現する経営基盤として、「オムロングループマネジメントポリシー」および「オムロングループルール」を制定しています。
「オムロングループマネジメントポリシー」では、多様な価値観を持つ社員がグローバルな一体感のもとで自律的に考え行動するために、企業理念に基づいたオムロングループにおける組織運営の方針を示しています。
「オムロングループルール(OMRON Group Rules:OGR)」は、「オムロングループマネジメントポリシー」を実現する為に遵守すべき事項を定めたオムロングループ共通のルールを定めています。OGRは「オムロングループルール管理ルール」により体系化され、「オムロン統合リスクマネジメントルール」の他、会計・資金、人財、情報セキュリティ、品質保証等の主な機能に対し制定されています。社内外の環境変化等を適宜・適切にルールへ反映するため、毎年見直しを行っています。
当社グループでは、企業倫理・コンプライアンス遵守を重要課題の一つとして位置付けています。「社会的責任を果たす企業経営」を実践するために、役員と従業員の具体的行動指針を示した「オムロングループ倫理行動ルール」を25言語で定めています。
役員と従業員への教育・啓発活動を企業倫理・コンプライアンス推進・徹底のベースと位置付け、新入社員教育、階層別教育などの機会を捉え、継続的な教育を実施しています。また、従業員の評価プロセスのうち、「オムロングループ倫理行動ルール」の遵守を含む倫理の観点では、企業理念の実践を求め、誠実と信頼の行動体現度を評価項目の一つにしています。当該評価は従業員にフィードバックし報酬にも反映されます。
企業倫理・コンプライアンスの推進組織として「企業倫理・リスクマネジメント委員会」を設置し、毎年10月を企業倫理月間と定め、企業倫理・コンプライアンス遵守を啓蒙しています。国内外の役員・従業員に対するトップメッセージの配信、グループ共通の経営基盤である「オムロングループルール」の周知、カルテル防止や贈賄防止、グリーンウォッシュやAI等コンプライアンスやリスクに関する重要テーマの教育、内部通報制度の周知を行っています。
「オムロングループ倫理行動ルール」において、公正な取引および法令の遵守を定め、特にカルテル等の反競争的行為、国内および外国の公務員等に対する贈賄について禁止しています。また、取引先や関係先との間であっても、節度を越えた接待や贈答などの行為も禁止しています。なお、2023年度において、反競争的行為により受けた法的措置および贈賄に関する違反や制裁を伴う事例はありませんでした。
情報開示に関する正確性、適時性、網羅性を確保するため、情報開示実行委員会を定期開催するとともに、インサイダー取引防止の研修等を行っています。なお、2023年度において、インサイダー取引により受けた法的措置および違反や制裁を伴う事例はありませんでした。
当社グループでは、「オムロングループ統合リスクマネジメントルール」に基づき、毎年グローバル視点で当社グループに関わるリスクを洗い出し、分析を加え、執行会議において重要なリスクを指定しています。グループ重要リスクは、四半期ごとの「企業倫理リスクマネジメント委員会」にて重要なリスクの発生状況、環境変化、リスク対策の状況について議論・共有するとともに、グループ全体のリスク評価を行い、計画的に取り組みを推進しています。
当社グループでは、SF2030において、「新たな社会・経済システムへの移行」に伴い生じる社会的課題を解決するため、事業ドメインにおける社会価値創出、事業とサステナビリティとの一体としての取り組みを行っています。2024年4月から2025年9月については構造改革期間とし、構造改革プログラム「NEXT 2025」を実行中です。これらを遂行する中で対処すべき重要な要素を、リスクと捉えています。
リスクのうち、当社グループを運営する上で、グループの存続を危うくするか、重大な社会的責任が生じうるリスク(Sランク)および重要なグループ目標の実現を阻害するリスク(Aランク)を「グループ重要リスク」に位置付け、対策の実行状況やリスク状況の変化をモニタリングしています。「グループ重要リスク」に対して適切な対策が講じられない場合、重大な社会的責任が生じたり、事業戦略の失敗につながり、結果的に企業価値が喪失する可能性があります。
2023年度末に実施したリスク分析に基づくグループ重要リスクの全体像は下表の通りです。
事業ポートフォリオや人員数・能力の最適化等「NEXT2025」の実行に伴うリスク、事業スピードの加速や収益性の改善をはかる中でのグループガバナンス・コンプライアンスリスク等については特に注視をしていきます。
当社グループが重点的に取り組んでいるテーマについては、当該リスクのリスクシナリオと対応策を有価証券報告書の「事業等のリスク」に記載しています。
万一、危機が発生した場合には、「オムロン統合リスクマネジメントルール」に則り、リスクレベルに応じた報告先に即時報告が行われ、Bad News Firstを実現しています。さらに、報告されたリスク情報を一元的に把握し、必要な対策を取り、再発防止まで確実に追える仕組みを構築しています。
当社グループが目指す姿は、現場だけでは対処できない環境変化から生じる問題を、現場と経営が力を合わせて解決するリスクマネジメントです。そのため、過去の事例を将来に活かすための資産として、事業リスク事例集「OMRON Risk Book–Risk Scenario 100」を作成し、経営層に説明する取り組みを進めています。経験していない事例を他山の石として、日頃からリスク感度を高めています。
ITシステム・情報セキュリティリスクに対しては、サイバーセキュリティ統括担当取締役の監督のもと、サイバーセキュリティ統括担当執行役員が取りまとめを行い、情報セキュリティ、製品セキュリティ、法令対応・リスクマネジメントの領域ごとに、各本社機能部門長が執行責任者として統制・管理しています。また、取締役会は重点テーマの一つに「不確実性の時代におけるリスク対応」を設定しており、その監督する観点に「サイバーセキュリティの強化」を掲げています。取締役会としてサイバーセキュリティに関する課題や今後の強化に向けた取り組みを監視・監督しています。
情報セキュリティについては、執行役員常務・グローバルビジネスプロセス&IT革新本部長がグループ情報セキュリティ統括管理責任者として、オムロングループにおける情報セキュリティ管理全般状況を監督し、その下に設置した情報セキュリティ主管部門が、オムロングループにおける情報セキュリティ管理全般状況の把握やオムロングループに必要な全体施策の立案・推進等を担っています。
また、製品セキュリティについては、製品の品質保証の一環として、執行役員常務・グローバル購買・品質・物流本部長が責任者として、製品セキュリティ主管部門を設置し強化を図っています。
同様に、法令対応・リスクマネジメントについては、執行役員・グローバルリスクマネジメント・法務本部長が責任者として、傘下に設置した部門において、各国法令動向やオムロングループの状況を把握し、必要な施策を推進しています。
各領域を横断する課題については、サイバーセキュリティ統括担当執行役員が議長となり、サイバーセキュリティ統括担当取締役が監督する「サイバーセキュリティ統合会議」を随時開催し、解決しています。
当社では、国内外でサイバーセキュリティ侵害が発生した場合、日本にある情報セキュリティインシデント対応チームであるCSIRTに報告することになっています。
2023年度は、事業に影響を与えるような重大なインシデントはありませんでした。
「オムロングループ倫理行動ルール」の中で情報の適切な保護と管理を定めています。個人情報に関するオムロングループルールを整備し、情報の重要度ランクに応じた取得から利用、廃棄に至る管理策を定めるとともに、個人情報保護に関する各国法令動向や当社グループの状況を把握し、必要な施策を推進しています。なお、2023年度において、個人情報に関する規制当局による指導や法令違反に則り外部への公表を要する事件・事故等はありませんでした。
当社グループでは、組織運営の健全性と効率性を確保するため、「内部統制システム整備に関する基本方針」を基に、グローバル監査室が内部監査を実施しています。内部監査としては、定期的な部門単位での監査に加え、企業倫理・リスクマネジメント委員会による「グループ重要リスク」に対する対策やモニタリング活動などを一覧化し、全社の残存リスクを見える化し、その中から重要リスクを選定し、本社のガバナンス状況を中心に、輸出管理や個人情報保護等のテーマ監査を行っています。
当社グループでは、企業倫理・コンプライアンスの浸透をモニタリングする仕組みとして、内部通報制度を整備し運用しています。
内部通報窓口を設置し、「オムロングループ倫理行動ルール」・就業規則・法令に違反する行為、またはそのおそれのある行為について、通報を受け付けています。秘密厳守や通報により不利益を受けないことなどを社内規程で定めて運用しています。内部通報制度は、イントラネットや社内研修などを通じて周知を図っています。
日本国内において、通報は当社およびグループ会社の役員・従業員・派遣従業員とその家族、退職者および仕入先様、構内労働の業務委託先社員様から受け付けています。また、社内窓口のみならず、外部弁護士事務所に委託して社外窓口も設置しています。日本国外でも、米州・欧州・中国・韓国・アジアエリアの各主要拠点に窓口を設置し、日本の運用に準じて運用しています。
また、日本では2022年6月に改正施行された公益通報者保護法に適応した運用を整備し、グローバルでは2023年度より全エリアでサプライヤーからの通報を受け付ける体制を構築するなど、継続的な運用の改善を行っています。
内部通報件数は内部通報制度の実効性を示すものの一つと捉えており、ある程度の通報件数があることが適正と考えています。2019-2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により内部通報件数は減りましたが、以降は復調し、2023年度は過去最多の106件の結果となりました。通報内容はパワーハラスメントに関するものが最も多く、規制・ルール違反の可能性、労務管理がそれに次いでおります。
また、対応事例としては、行き過ぎた業務指導に対する対象者への注意指導、問題や脆弱性のある業務の運営方法の見直しや統制強化、さらに重篤な事案に対しては懲戒措置を講じ、改善と再発防止を進めています。
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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日本 | 27 | 23 | 39 | 30 | 29 |
日本以外 | 30 | 11 | 27 | 54 | 77 |
合計 | 57 | 34 | 66 | 84 | 106 |
「オムロングループ倫理行動ルール」・就業規則・社内規定・法令に違反する行為が認められた場合には、当社グループ各社で定める就業規則等の規程に基づき、懲戒処分を行うなど、厳正に対処し、結果として人事評価や報酬にも反映しております。なお、2023年度においては、取締役会に報告した重要な懲戒処分が3件発生しました。
オムロンは、さまざまな経済団体・業界団体への参画を通じて提言を行い、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
団体名 | 活動内容および当社の役割 |
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一般社団法人 日本電機工業会(JEMA) |
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)は、発電設備や送電設備などの電力インフラ機器から産業用機器、家電製品などの電力需要家側の機器に至るまでの、日本の電機産業に関わる企業・団体で構成される工業会であり、「日本の電機産業の国際競争力を強化し」「社会・生活インフラの改善と向上を図り」「持続可能な世界の進展に貢献する」というビジョンを掲げ、日本の電機産業の発展と持続可能な社会の実現を目的として活動を展開しています。 オムロンは理事として本工業会の運営に携わっています。 |
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) |
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)は、Society 5.0に向けた社会課題を解決するために、IT・エレクトロニクス産業を中核に多様なステークホルダーを結節するプラットフォームを目指す日本最大級の業界団体です。JEITAは、会員企業や政府・関係機関と連携して、カーボンニュートラルなどの社会課題解決や競争力強化、市場創出に取り組み、日本経済のさらなる活性化、そして未来の社会や暮らしに貢献しています。 オムロンは本協会の会員として、他の会員企業と連携しながら、電子部品業界に関わる世界各国の動向情報の入手や規制・ルール作りに携わっています。 |
一般社団法人 日本電気制御機器工業会(NECA) |
一般社団法人 日本電気制御機器工業会(NECA)は、NECAは電気制御機器業界の健全な発展を目指して設立された工業会であり、電気制御機器に関する調査・研究・規格の立案等や電気制御機器利用による安全対策の実施等の社会的課題の解決を目的としています。 オムロンは、副会長として本工業会の運営に携わるとともに、制御機器事業部門および電子部品事業部門のメンバーが技術委員会や業務委員会に所属し、IEC規格/JIS規格等の改正や新規制定、制御機器に関する最新技術の調査と情報提供、電気制御機器に関する統計情報の収集・分析、需要予測、市場動向・経済情勢などの情報収集などを行っています。 |
一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連) |
一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)は、日本の代表的な企業1,542社、製造業やサービス業等の主要な業種別全国団体106団体、地方別経済団体47団体などから構成される総合経済団体です(2024年4月1日現在)。経済界が直面する内外の広範な重要課題について、経済界の意見を取りまとめ、着実かつ迅速な実現を働きかけるとともに、各国の政府・経済団体ならびに国際機関との対話を通じて、国際的な問題の解決と諸外国との経済関係の緊密化を図っています。 オムロンは、サプライチェーン委員会の委員長として、デジタル化の推進など産業の強靭化につながるサプライチェーンの実現に尽力しています。 |
公益社団法人 経済同友会 |
公益社団法人 経済同友会は、日本経済の堅実な再建を目的に1946年に設立された公益財団法人であり、企業経営者が個人として参加し、自由社会における経済社会の牽引役であるという自覚と連帯の下に、一企業や特定業種の利害を超えた幅広い先見的な視野から、国内外の諸問題について考え、議論し政策提言を行っています。 オムロンからは名誉顧問の立石文雄が会員となり、各種委員会の活動に携わっています。 |