私たちの生活や経済、そしてウェルビーイングは、生命の基盤である生物多様性のもとに成り立っています。しかし、人口増加と経済活動拡大の結果、生物多様性は深刻な減少危機に瀕しており、生態系の保全と回復は人類社会が直面している重要な課題の一つです。
オムロンは、2010年に「生物多様性方針」を制定し、生物多様性の保全に取り組んできました。
2022年12月に策定された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の自然との共生、ネイチャーポジティブの考え方に賛同し、自然資本に関するリスクと機会の開示フレームワークであるTNFD (自然関連財務情報開示タスクフォース)等を参照して、2024年に「生物多様性方針」を改訂しました。
なお、本生物多様性方針は取締役会で承認された環境方針の下位方針として、サステナビリティ担当役員が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会にて審議し、承認を受けています。
(改定:2024年7月)
野洲事業所は、マザーレイクと称される琵琶湖がある滋賀県に立地しています。2021年9月末まで半導体・MEMSを製造する工場を有していたため、環境には特に配慮して排水を浄化後、河川に放流していました。その工場排水を有効活用し、2011年に造成したビオトープ※1で、環境省が絶滅危惧IA類に指定しているイチモンジタナゴ※2の保護・増殖を行ったり、近隣の学童保育所や小学校の児童向けに自然観察会を開催し、子供たちへの環境教育にも貢献してきました。その結果として、滋賀県が生物多様性の保全や自然資源の持続的な利活用を評価する「しが生物多様性取組認証制度」では最高認証である三ツ星を取得しました。
しかしながら、2021年10月に半導体・MEMS事業が別会社に譲渡され、併せてビオトープの敷地も譲渡対象となったため、従来のようにビオトープを活用した生物多様性の取り組みは出来なくなりました。
BBN※3では、滋賀県に拠点を持つ企業7社(オムロン含む)が共同で、水と深い関係があるトンボを共通の指標生物とし、これまで県内で確認がある100種のトンボの調査、保全、発信の3つのアクションを活動の軸として取り組んでいます。2021年度は、地域の子供たち向けにトンボの観察会および標本作りの開催や、琵琶湖博物館様との共催で約1か月間の企画展示会を開催し、これまでの取り組みを多くの人に伝える機会となりました。これらの活動が評価され、「日本自然保護大賞2021」では教育普及部門にて大賞を受賞することができました。
野洲事業所独自の活動として、滋賀県レットデータブック2020年度版で希少種に指定されているトンボ『マイコアカネ』の保全・復元(モニタリング、保護増殖、生息地の改善)に注力しています。近年、マイコアカネは滋賀県において生息地や生息数が減少していますが、野洲事業所構内では毎年飛来が確認されており、飛来状況の調査を継続的に実施しています。また、事業所内にコンテナビオトープを創出し、繁殖地の創出や採卵した個体を用いて保護増殖する取り組みを行っています。マイコアカネの生息地の一つである野洲川河畔林では、2021年度に、野洲事業所の社会貢献活動の一貫として、従業員参画のもと、地域の方と連携し、トンボの繁殖地の環境改善と新しい生息地の創出を行いました。
これまでの取り組みで、事業所の緑地は地域の自然の一部となっていることがわかりました。これからも、事業所の緑地を活かして、地域個体群の保全に取り組み、希少な種や地域の在来種の保全を推進するとともに、地域や他社との協働による環境保全の環を広げていきます。
※1 ビオトープ
ドイツ語の「生物」を意味するBioと「場所」を意味するTopの合成語で、野生動植物が生息する空間を意味する。最近は、生態系としての森林や川、沼、湿地、草地、雑木林の総称としても使用される。日本では人為的に造り出したものの意味で使用されることが多い。(「生物多様性読本」日経エコロジーから引用)
※2 イチモンジタナゴ
コイ科の淡水魚で、環境省のレッドリストでIA類(もっとも絶滅が危惧される種)に指定されている。体側には青緑色の長い縦条があるため、イチモンジの由来となっている。もともとは琵琶湖淀川水系等で多数生息していたが、外来魚の増加や河川改修により、今では琵琶湖ではその姿を見ることはできない
※3 BBN
「生物多様性びわ湖ネットワーク」の略称、生物多様性びわ湖ネットワーク参画企業(五十音順): 旭化成株式会社、旭化成住工株式会社、オムロン株式会社、積水化学工業株式会社、積水樹脂株式会社、ダイハツ工業株式会社、株式会社ダイフク