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TCFD情報開示

TCFD情報開示

気候変動への対応

世界各地で異常気象による大規模な自然災害が多発する中、気候変動は当社が取り組むべき最重要課題であると捉え、2022年度からスタートしたSF2030において、「Shaping The Future 2030」というビジョンのもと、社会的課題「カーボンニュートラル社会の実現」に挑みます。

2019年2月に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明以降、株主・投資家などのステークホルダーと当社の気候変動取り組みについてのエンゲージメントを強化するため、TCFDのフレームワークに基づいた情報開示を進めています。

TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示

TCFD提言は、すべての企業に対し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの項目に基づいて開示することを推奨しています。当社グループは、TCFD提言の4つの開示項目に沿って、当社の気候関連への取り組みを開示します。

ガバナンス

①気候変動に関するガバナンス

取締役会の役割・監視体制

当社グループでは、「オムロン コーポレート・ガバナンス ポリシー」において、TCFD等の枠組みに基づく気候変動リスクへの取り組みを含むサステナビリティ方針・重要課題および目標について、取締役会が決定・開示することを明確に定めています。

TCFD提言に沿って「SF2030」及び中期経営計画と連動させ各事業のシナリオ分析を行い特定した気候変動に関するリスクや事業機会、目標や具体的な取り組み施策については、執行会議およびサステナビリティ委員会で協議・決定・進捗管理・モニタリングを定期的に実施し、必要に応じて是正策を検討します。取締役会は、執行会議で協議・決定された内容の報告を定期的に受け、論議・監督を行っています。

また、2021年度から2024年度を対象とする社内取締役および執行役員の中長期業績連動報酬(株式報酬)評価指標の一部として、温室効果ガス排出量の削減目標、気候変動対応を含む第三者機関によるサステナビリティ指標(Dow Jones Sustainability Indices)に基づく評価を組み込んでいます。

戦略

②気候変動に関する戦略

短期・中期・長期の気候関連リスク・機会および対応

長期ビジョン「SF2030」および中期経営計画では、サステナビリティ重要課題「脱炭素・環境負荷低減の実現」を設定し、気候変動を「機会」と「リスク」の二側面で捉え、企業としての社会的責任の実践と更なる競争優位性の構築を図ります。

そして、気候変動による生態系および人間社会に対する深刻な影響の拡大を抑止するため、当社は「脱炭素に向けた製品・サービスの提供」、「モノとサービスを組み合わせたビジネスモデルの進化」、「パートナーとの共創」、「エネルギー効率の改善」、「再生可能エネルギーの使用拡大」などによりバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減に取り組んでいきます。

その中で、当社グループは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などが発表する「世界の平均気温が4℃以上上昇する」「世界の平均気温がパリ協定で合意した2℃未満の上昇に抑えられる(一部1.5℃以内)」の2つのシナリオで、リスクと機会を分析し、気候変動問題解決にはオムロンの対応が必要であると再確認しました。具体的には、インダストリアルオートメーションの分野において、i-Automation!を進化させ、地球環境との共存と、働く人々の働きがいも両立させるサステナブルな未来を支える製造現場を構築し、生産性とエネルギー効率を高めるオートメーションの実現を目指します。また、ソーシャルソリューションの分野において、これまで太陽光発電や蓄電池の普及に貢献してきましたが、今後は、進化したエネルギー制御技術で発電の不安定さを解消し、再生可能エネルギーのさらなる普及に貢献します。またデバイス&モジュールソリューション分野では、製品の環境性能向上、およびカーボンフットプリント削減に係る関心の高まりによる電子部品事業部品の開発・提供も加速させます。その他にも社会と様々な接点を持つ当社グループは、社会の多くの場面でカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

また、2022年度では、当社グループは国内製造業で初めてEP100に加盟し、制御機器事業とヘルスケア事業のすべての生産拠点において1ギガワット時(GWh)当たりの売上高比率である「エネルギー生産性」を2040年までに2016年比で倍増させることをコミットしました。現在、血圧計や体温計の国内生産拠点である松阪事業所では、制御機器事業とヘルスケア事業が連携し、エネルギー消費量を減らしながら生産量を倍増する仕組みづくりに取り組んでいます。取り組みを通じて得たノウハウを自社だけにとどまらず世の中に提供していくことで、製造業および社会の脱炭素化に貢献していきます。

事業を通じてカーボンニュートラルに貢献する全社売上高目標と進捗

2024年までの中期経営計画では、事業を通じてカーボンニュートラルに貢献する全社売上高目標(Green Revenue)を1,300億円と設定しています。その初年度である2022年度の実績は、カーボンニュートラルへの取り組みを加速し、1,092億円(計画比+105%)を達成しました。

リスク・機会の種類 顕在時期 リスク・機会の概要 事業及び財務への
影響
リスク・機会への対応
1.5℃/
2℃
4℃
リスク 移行 政策・規制 中期
  • 気候変動規制への対応による事業コスト増加(炭素税、排出権取引、サーキュラーエコノミー規制などの導入)
  • 計画的な省エネ・再エネの推進(高効率空調機器の導入、再エネ自家発電の拡大、社会システム事業からのJ-クレジット調達等)など
市場・技術 短~中期
  • 製品の環境性能向上、カーボンフットプリントの削減等、脱炭素に係る領域での競争環境の激化
  • 温室効果ガス排出量削減・サーキュラーエコノミー規制対応などの環境課題解決に繋がる製品・サービスの開発など
評判 短~中期
  • 顧客からのニーズに応えられないことでの評価の変化
  • 環境課題解決ニーズを捉えられないことでの業績不振により投資家からの評価の変化
  • 積極的な気候変動/サーキュラーエコノミー対応を進めることによるESG投資の呼び込みと自社製品の付加価値向上など
物理 急性 短期
  • 自然災害の激甚化(洪水・集中豪雨・水不足等)による拠点・協力工場の生産設備停止及び部材調達の停止
  • 自社拠点における事業継続計画(BCP)再構築によるレジリエンス強化
  • 半導体を中心とする調達先の拡大、設計変更による調達リスクの低い部材への切り替えを継続強化すると同時に、中長期的視点に立ち、よりレジリエンスを高めるためのサプライチェーン戦略の策定など
機会 製品・サービス・市場 制御機器事業 短~中期
  • 下記事業領域にてFA機器提供機会が増加
    【領域別】
    • デジタルデバイス領域: 環境対応車やEV普及を支える半導体需要増加
    • 環境モビリティ領域: 二次電池などEV関連部品やEV車の需要増加
    • 食品日用品領域: 脱炭素社会実現に向けた脱プラスチックなど環境配慮型包材の需要増加
  • 生産プロセスにおける脱炭素化ニーズの拡大
生産工法変化や新規設備投資、生産現場におけるエネルギー生産性向上ニーズへの、i-Automation!によるソリューション提供など
ヘルスケア事業 短~中期
  • エシカル消費の拡大による環境性能対応へのニーズの増加
  • 環境性能対応強化(カーボン削減やサーキュラーエコノミー対応など)による消費需要の獲得など
社会システム事業 短期 脱炭素化、電力価格の高騰への対応、エネルギーマネジメントニーズ増加に伴い、下記が加速
【共通】
  • 再エネ/畜エネ/エネルギーマネジメント市場の拡大により、「電力を自ら創る・貯める・使う」スタイルが加速
  • 自治体の条例や住宅向け太陽光優遇措置により、太陽光発電システムの拡大とパワコンニーズの拡大
  • 自然災害への対策強化やエネルギーコストの高騰などから双方向充電システムやエネルギー需給制御システムのニーズが拡大
【領域別】
  • 家庭:屋根⽤太陽光優遇措置や⾃然災害への対策強化ニーズから⾃家発電/蓄電池システムの需要増加
  • 業務/産業:脱炭素化が加速し、太陽光発電システムやエネルギー需給制御システムの導入が拡大
  • 太陽光を始めとする再生可能エネルギーを活用したエネルギーマネジメント市場における、更なるパワーコンディショナー、蓄電池の拡販
  • V2Xなど新技術、エネルギーマネジメント市場での事業機会獲得
電子部品事業 短~中期 下記による電子部品事業部品の提供機会の増加
【共通】
  • 製品の環境性能向上、及びカーボンフットプリント削減に係る関心の高まり
【領域別】
  • 家電領域:平均気温の上昇により、空調設備の需要が増加することに加えて、同設備に起因する温室効果ガス排出削減策の強化が求められることに伴い、インバーター付エアコンの需要が増加
  • 電動工具領域:製品利用に伴う温室効果ガス排出削減策の強化が求められることによる工具の電動化が進展。これに伴い、DC電流の遮断需要が増加
  • FA領域:新たな製品(EVや次世代パワー半導体、再生プラ、代替食品等)の需要増加や、生産工程の脱炭素化が進展することにより、FA設備の新規導入・入替需要が増加
  • 顧客製品の省エネ化、及び顧客生産プロセスを含む製造プロセスのカーボンフットプリント削減に寄与する電子部品の開発・提供加速
  • 脱炭素化に向けた製品の需要・設計の変化を機会として獲得すべく、市場動向の適時把握など
  • 物理リスクは、日本、中国を中心とする主要生産15拠点を対象として、ハザードマップ、AQUEDUCTを活用した分析を実施しました。100年に1度の災害が発生した際には、2拠点がリスクに晒されることが明らかになりましたが、再現期間を加味した年間影響額は1.5/2℃・4℃どちらのシナリオでも極めて小さいことから影響度は「小」としています。

想定期間:SF2030期間(2030年度まで)

採用シナリオ:

  • 4℃シナリオ:IPCC/RCP8.5, IEA/STEPS
  • 1.5/2℃シナリオ:IPCC/RCP2.6, IEA/SDS(一部IEA/NZE)

時間軸の定義:
短期:3年未満、中期:3年~10年未満、長期:10年~30年

シナリオ分析対象:既存事業

事業及び財務への影響度(大中小)の定義

<リスクへの影響度:営業利益に対してプラスもしくはマイナスの影響>

  • 大=当社の顧客や市場等における気候変動に対する継続的な規制・政策等により、今後も当社への影響が見込まれ、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が100億円以上と試算される。
  • 中=既に当社の顧客や市場等における気候変動に対する動きがあり、継続的な影響が今後も見込まれる。ただし、消費者の受入れ是非や投資対効果の判断などにより、中長期的に対応の変化も想定される。その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が30億円以上100億円未満と試算される。
  • 小=既に当社の顧客や市場等における気候変動に対する動きがあるが、中長期的な影響は限定的と想定される。その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が30億円未満と試算される。

物理的リスクへの対応計画

当社は、SBTに基づく2050年までの温室効果ガス排出削減目標「オムロン カーボンゼロ」を設定し、取り組みを推進しています。
水リスクにおいても、2030年を想定し、グローバル全拠点(既存・新規事業を含む)において、CDP Waterが評価基準として認めているWRI AQUEDUCTとリスクマネジメントコンサルティング会社提供の水リスク分析サービスによって、水リスクにさらされている拠点を把握しています。

水リスクにさらされている拠点は、中国(大連)、中国(上海)、ブラジル(ジュンディアイ)とイタリア(フロジノーネ)の4拠点で、2022年度の取水量は計212千m3です。これはオムロンの2022年度の取水量の20%となります。現在のところ、行政当局からの取水量削減、排水水質向上といった指導、指示はありませんが、自主的に水資源の保護及び事業継続の備えに取り組んでいます。

また、水リスクなどの物理的リスクの高い拠点においては、下記を計画的に実施しています。

  1. 発電機の設置
  2. 物流保険・財物保険への加入
  3. 防災マニュアルの随時見直し
  4. 製品製造への影響の最小化(製造工程の見直し)など

リスク管理

③気候変動に関するリスク管理

リスクを評価・識別・管理するプロセス

当社グループは、各事業のシナリオ分析を実施し、気候変動影響による「移行リスク」「物理リスク」を網羅的に抽出しています。そして、抽出した気候変動に伴うリスクについて、採用シナリオごとに「顕在時期」「事業および財務への影響額」を可視化し、事業および財務への影響度を評価しています。評価を基に当社グループにとって重要な気候変動に伴うリスクを特定し、事業リスクの一貫として全社リスクマネジメントに統合しています。なお、対応策の立案にあたっての重要事項は、取締役会へ報告しています。

2022年度は、制御機器事業、ヘルスケア事業及び電子部品事業については、2021年度のシナリオ分析の結果を再評価し、社会システム事業については、シナリオ分析を再実施しました。物理リスクについては、各事業における主力製造拠点のリスク評価の見直しを行いました。

全社リスクマネジメントへの統合状況

当社グループは、リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、グループ共通のフレームワークで統合リスクマネジメントの取り組みを行っています。気候変動リスクをグループ重要リスクと識別・評価し、シナリオ分析によるリスクと整合させ、取り組みのモニタリングを行っています。

指標と目標

④気候変動に関する指標と目標

気候変動のリスク・機会に関する指標

当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3※1の温室効果ガス排出量、および事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギーに関する指標を定めています。

温室効果ガス排出量に関する目標及び実績(Scope1・2・3)

当社グループは、環境分野において、持続可能な社会をつくることが企業理念にある「よりよい社会をつくる」ことと捉え、2018年7月に、2050年にScope1・2について温室効果ガス排出量ゼロを目指す「オムロン カーボンゼロ」を設定しました。

そして2022年3月、オムロンはカーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組みを進化させ、Scope1・2については、削減シナリオを2℃シナリオからより積極的な1.5℃シナリオに変更しました 。また、Scope3カテゴリー11について、2030年に18%削減(2016年度比)という目標を新たに設定しました。これらの目標はSBTイニシアチブ※2の認定を受けています。

また、目標達成に向けて、オムロンは、引き続きエネルギー効率の改善を進めるとともに、自社のエネルギーソリューション事業が提供する再エネ由来のJ-クレジット※3や自己託送※4などを活用することで、2024年度にScope2についてオムロンの国内拠点のカーボンゼロ※5の実現を目指します。

(単位:kt-CO2

  2016年度実績
(基準年)
2022年度
実績
2024年度
目標
2030年度
目標
2050年度
目標
排出量 排出量 2016年度比 2016年度比 2016年度比
Scope1・2※6 250 93※7 △62% △53% △65% ゼロ
Scope 3
カテゴリー11
9,102 11,965 +31% ※8 △18% ※8
  • ※1Scope1・2: 自社領域から直接的・間接的に排出される温室効果ガス
    Scope3カテゴリー11: Scope3は自社のバリューチェーンからの温室効果ガスの排出。そのうち、カテゴリー11は製造・販売した製品・サービス等の使用に伴う排出。
  • ※2SBTイニシアチブ: Science Based Targets イニシアチブ: 科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減の中長期目標設定を推奨している国際的イニシアチブ
  • ※3J-クレジット: 環境価値 (CO2を排出しない効果)を国が認証する制度
  • ※4自己託送: 自家発電設備を保有する事業者が当該設備を用いて発電した電力を、一般送配電事業者の送電網を介して遠隔地にある自社工場や事業所などに送電・供給し、電力を使用することが可能となる電力供給制度
  • ※5生産13拠点、非生産(本社・研究開発・販売)63拠点における自社の電力使用により排出されるGHG(Scope2)が対象
  • ※6温室効果ガス排出量(Scope1・2)の2021年度の実績は、オムロンコーポレートサイトに掲載し、ビューローベリタスジャパン株式会社による限定的保証業務により第三者保証を受ける予定です。
    当該限定的保証業務は、いずれも国際監査・保証基準審議会の国際保証業務基準(ISAE)3000「過去財務情報の監査又はレビュー以外の保証業務」に準拠した業務です。
  • ※72022年度のGHG削減は、計画を上回る省エネ・創エネの取り組みに加え、マレーシアの脱炭素政策・中国上海地区でのロックダウン等の影響により、目標を大幅に上回る削減量となりました。
  • ※8今後、達成実現性の精度が高まり次第、目標を設定
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