オムロンの「健康経営宣言」と、健康経営の取り組みについてご紹介します。
基本方針
健康経営の取り組み
オムロングループでは、企業理念の実践を通じて社会的課題の解決を目指しています。変化の激しい世の中において、新たに生まれる社会的課題を解決していくには、さらなるイノベーションの創出が不可欠です。そのためには、オムロングループで働く多様な人財が、活力に満ち溢れ、ポテンシャルを発揮することが重要です。
会社の発展にとっても欠かせない社員の健康の維持向上に向けて、「健康経営®宣言」を制定しました。
オムロン健康経営宣言
私たちオムロンは、世に先駆けたチャレンジによる、新たなソーシャルニーズの創造を目指します。 そのためには、オムロンで働く社員の健康が経営の基盤と考え、皆が豊かで充実した生活を送れる環境をオムロン一体となって作り上げていきます。そして、笑顔と活力にあふれる健康的な職場を創造し続けることで、イノベーションを起こし、様々な社会的課題の解決に取り組んでいきます。
代表取締役社長 CEO
「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
オムロンの健康経営の活動方針には3つの軸があります。
1つめは「イノベーションを起こす人と組織をつくる」ということ。前向きなチャレンジを促進する環境を整えて、仕事にやりがいや楽しさを感じられるようにします。
2つめは「心身が健康で、社員が自分の人生を楽しんでいる状態をつくる」ということ。社員には健康に配慮した生活を心がけてもらい、仕事だけでなく趣味や地域活動なども積極的に楽しめるようにします。
3つめは「オムロンを卒業しても社会で活躍し続ける社員でいっぱいにする」ということ。健康を維持・向上できれば、将来にわたって活躍できるようになり、社会に貢献しながら充実した人生を送ることができます。
オムロンは将来にわたる健康リスクの軽減を目指し、社員の健康づくりを全社的に推進してきました。そして、オムロンの健康経営の取り組みは「⼈的創造性」※の向上を目指した人的資本経営へと進化を続けます。それは、従来の「健康づくり」から「一人ひとりが能力を発揮し続ける基盤づくり」へのトランスフォーメーションです。オムロンは、新たな社会的課題の解決に挑戦し価値創造にチャレンジする人財へ積極的に投資を行い、社員個々人がもつ多様で多才な個性や能力を思う存分発揮しつづける環境をつくります。
健康経営の推進にあたっては、経営課題の解決につながる健康課題を特定し、それらを解消するための手段や具体的取り組みに落とし込むため、健康経営戦略マップを作成しています。健康経営戦略、ストーリーを明確にすることで、取り組みの実効性を高めています。
オムロングループでは、従業員の健康への具体的な取り組みを年度目標や計画に基づいて進めています。そして、それらの内容や進捗状況の報告に基づき、取締役会が監視・監督を行っています。
オムロングループ(国内)の健康経営担当部門は、産業医・産業保健スタッフといった専門職、健康保険組合と連携し、組織横断で目標達成に向けた課題解決への対応を進めています。
健康経営の取り組みを加速させるため、産業医をはじめとした看護職、カウンセラー等産業保健スタッフの配置において、法令を超えた独自基準※1を設置し、社員一人ひとりに対応したきめ細やかな健康管理サービスを実施しています。
また、従業員の健康情報を健康管理システム※2に統合し、各事業所に配備した医療職、衛生管理者、所属長がいつでも各役割に必要な情報を共有できるようにしています。
オムロンでは健康経営を推進するにあたり、疾病予防や改善にとどまらず、職場で集中力を発揮するとともに私生活も存分に楽しむ豊かな人生に直結する要素として、全社共通の指標「Boost 5」を独自に設定しています。「Boost 5」とは、運動、睡眠、メンタルヘルス、食事、タバコ(禁煙)の5項目で、いずれも集中力を高め、パフォーマンスを向上させるうえで欠かせない要素です。
これらの5つの指標を一つでも多く達成できる社員が増えるよう、「Boost 5」の浸透を目的としたイベントと、特別に意識をしなくても健康行動に結びつけられる環境整備の両面でBoost 5の取り組みを進めています。その結果、健康経営の社内の浸透度は着実に上昇し、グループ全社で9割を超えています。
オムロンは、Boost 5それぞれの指標の目標達成に向けて、年度ごとに特に注力すべきテーマを設定しています。Boost 5の達成状況の結果から、「食事」(BMI18.5~25未満)の指標達成割合が減少傾向にあることがわかりました。とくに、コロナ禍で在宅勤務が進んだことや外出自粛によるライフスタイルの変化などから2020年に肥満者が急増し、その後も増加傾向が持続しています。このため2022年度は「食事」を注力テーマとし、在宅太りの解消を目指した取り組みを実施しました。
食生活の改善および適正体重の維持をテーマに社内の看護職によるオンラインセミナーを実施し、延べ2,469名の社員が参加しました。セミナーは5~7月の期間に、「栄養・食行動の振り返り」「代謝促進トレーニング」「肥満と睡眠の関係」など、Boost 5の指標と組合せたテーマを取り上げ、計26回開催しました。各回異なる看護職が参加社員と双方向のやりとりをしながら、明日から実践できるTIPSをアドバイスし、最終回は統括産業医によるダイエット法の伝授を行いました。参加者のアンケート結果(回答率67%)から、回答者の95%がセミナーに満足、80%が行動改善できると回答し、一定の効果が得られました。セミナー終了後はアーカイブ配信を行い、より多くの社員が視聴できるようにしました。
適正体重の維持、肥満の予防のために食生活の見直しとあわせて日常生活で継続的に運動する施策を促進しました。テレワークや外出自粛等の在宅生活が続く環境でも社員一人ひとりが取り組める運動として、ラジオ体操動画の配信や、筋トレ等のセミナーをオンラインで開催しました。また、従来から社員の健康増進活動として実施してきた社内ウォーキングイベント「オムウォーク」に社員が参加しやすい環境を整えるため、新たなアプリを導入し、運動の習慣化に取り組みました(参加者数2,144人)。
食生活の改善や運動増進の取り組みのほか、肥満改善や適正体重の維持を目指した健康保険組合主催の体重測定チャレンジイベント、Boost 5健康マメ知識ポスターの掲示など、多種多様な施策を展開しました。その結果、年々上昇していた肥満者割合が0.1ポイント減少して横ばい傾向に転じ、食事の指標の達成率が0.3ポイント増え、改善傾向が示されました。
「Boost 5」の評価については、事業運営上の観点から社員の健康状態やパフォーマンス等の指標を取り入れ、それらとの関連を分析・評価しています。グラフのとおり、Boost 5の5つの指標をより多く達成している社員ほど健康状態が良好で、ハイパフォーマンスを自覚している傾向を示しており、これは、健康経営をスタートして以降、毎年同様の結果となっています。
〈健診およびレセプトデータ、Boost 5アンケート結果より〉※2022年7月時点
〈Boost 5アンケート結果より〉※2022年7月時点
また、パフォーマンスやワークエンゲージメントの高い社員について健康増進施策の活用度別に分析したところ、「Boost 5」の各種取り組みから得た知識を仕事や健康増進に「積極的に活用している」と回答したグループは、高パフォーマンスや高ワークエンゲージメントの割合が多い傾向が示されました。
<ストレスチェックおよびBoost 5アンケート結果より>※2022年7月時点
Boost 5による健康推進は、年度ごとに注力テーマを設定して取り組み、目標指標を達成している社員は年々増えています。
そして、年度ごとに健康経営の取り組みを振り返り、成果や課題を社内の健康経営サイト上に開示して、社員の健康への意識向上につなげています。また、Boost 5の指標の達成状況を社員一人ひとりにフィードバックし、すべての指標を達成した社員をいきいき健康実践者「Boost 5マイスター」として表彰しています。
注力テーマ | 2019年度 【タバコ】 |
2020年度 【運動】 |
2021年度 【メンタルヘルス】 |
2022年度 【食事】 |
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主な取り組み | ●全社禁煙化 ●卒煙マラソン |
●ラジオ体操の普及促進 ●オンラインフィットネス |
●セルフケア実践イベント ●Eラーニング |
●オンラインセミナー ●体重測定チャレンジ |
〈Boost 5アンケート結果より〉
オムロンは、Boost 5の健康施策の効果と健康経営で解決したい課題の改善状況との関連を、経年データをもとに検証し、より実効性のある取り組みにつなげています。
過去5年(2018年~2022年)の全期間においてBoost 5の指標を3つ以上達成し続けているグループは、2021年度の健康年齢®が実年齢より約3歳若かったことがわかりました。また、Boost 5の達成指標が2つ以下のグループと比べても、健康年齢®が実年齢より有意に低い傾向でした。
健康経営Boost 5の施策については、結果評価および効果検証を行うほか、新たな課題を把握し、PDCAサイクルを回して取り組みを推進しています。これまでのBoost 5の経年推移から、「運動」の達成割合が半数以下で推移している状況を課題として認識し、2023年度は「運動」に注力するとともに、健康によい行動を維持・改善できる施策を展開していきます。
〈Boost 5アンケート結果より〉
国内全てのグループ会社で、各種健康診断およびストレスチェックに基づいた組織診断や職場ヒアリング、産業保健スタッフ等の支援による職場環境改善活動等を実施し、心身ともに健康な職場づくりに取り組んでいます。
オムロン(株)は、健康経営をスタートして以来、定期健診受診率100%を維持しています。そして、ストレスチェックの2022年度の受検率はグループ(国内)全体で96.0%(対象者:11,448人、実施済:10,995人)でした。
2017年度から毎年取り組んでいるEラーニングを活用したセルフケア研修の2022年度の受講率は、グループ(国内)全体で97.0%(対象者:10,995人、受講者:10,670人)でした。さらに、2021年度に試行した管理監督者向けのラインケア研修のEラーニングを2022年度から正式に開始し、受講率は96.6%(対象者:1,401人、受講者:1,354人)と前年の86.8%から約10ポイント上昇しました。
社員および管理監督者からの個別相談は、産業医、看護職、カウンセラー等の社内の産業保健スタッフが相談対応を行うほか、すべての社員が24時間対応可能な外部カウンセリング機関を利用できる等、相談窓口を複数設置する体制を整え、メンタルヘルスケアの推進を図っています。
また、ストレスチェックにおいては、実施のみにとどまらず、集団分析の結果を各職場での職場環境改善に活用し、継続的な改善活動を通じてメンタルヘルス不調の予防を強化するとともに、笑顔と活力にあふれる健康的な職場づくりに取り組んでいます。
オムロングループ(国内)では2020年4月に、就業規則による就業時間内(昼休みを含む)禁煙を制度化しました。この「全社禁煙化」の開始に向けて、2019年度より各拠点にて段階的な環境整備に取り組みました。加えて、健康保険組合と連携した禁煙支援策として、全社禁煙イベント「卒煙マラソン」や禁煙外来補助等を行いました。全社禁煙化となってからも、健康保険組合を中心に禁煙支援施策を継続しており、全社喫煙率(15.7%:2022年7月)は着実に低下しています。
女性特有の健康課題に対するヘルスリテラシー向上のため、「働く女性の健康応援オンラインセミナー」を健康保険組合の協力を得て開催しました(2023年2~3月開催:参加者270人)。更年期をテーマにしたベーシックセミナーに加え、産婦人科医による対談セミナーを企画し、参加者の質問・相談に対して医師から具体的なアドバイスを得られる機会を設けました。女性の健やかなワーキングライフの実現には、日頃のセルフケアと婦人科受診を通じてホルモン変化による心身の不調に適切に対処することの重要性を認識でき、受診セミナー後のアンケート調査では(回答率79%)、ほぼ全員が満足(97%)、セルフケアに活用できる(97%)と回答しました。
健康行動を維持・改善し、将来にわたって健康で充実した人生を実現するため、56~59歳の社員および配偶者・パートナーを対象にオンラインでの健康セミナーを2022年度に計10回開催しました(参加社員計556名)。健康の3つの側面(身体、精神、社会)について、体力テスト、Boost 5や幸福度のアンケート等、事前の自己チェック結果を集計し、セミナー時にフィードバックしながら課題と対策を共有しました。参加者のアンケート結果(回答率93%)から、体力低下の自覚と運動実践の声が最も多く聞かれました。また5段階評価にて理解度4.3、満足度4.1と一定の評価を得られました。
オムロングループ(国内)においては、日常の健康管理として、従業員に感染症罹患報告を義務付け、啓発活動などの感染症予防対策を講じることによって、職場における集団感染を防止しています。
また、オムロングループとして「グローバル新型感染症対策指針」を定めています。新型インフルエンザ等、従業員や家族の生命に関わるような重大な健康被害を及ぼす可能性がある感染症に対しては、この対策指針に従って対処することとしています。
先般のCOVID-19パンデミック対応では、いち早くグループ対策本部を設置しました。製品・サービスの供給責任を果たしつつ、各国政府による法令・施策・指示・指導などに応じて、在宅勤務指示や出社社員数のコントロールを行いました。また弊社社員に留まらず、弊社事業所構内で働く派遣社員や委託先社員の皆様にも弊社社員に対するものと同様のお願いをし、ご本人とそのご家族の健康と安全の確保に努めました。
グループ(国内)では、政府の施策に基づき、2021年度からワクチンの職域接種を実施し、1,2回目 は7,854名、3回目は 5,634名の社員およびオムロングループ関係者がワクチンの接種を受けました。
社員一人ひとりの健康の維持・増進と創造性の発揮・生産性向上を両立させ、個人と企業の持続的成長につなげていくため、働き方改革に取り組んでいます。
【目標指標】
総実労働時間
【目標】
総実労働時間1,800時間台水準での生産性の持続的向上
【実施状況】
2022年度は、目標としている総実労働時間1,800時間台水準に対して、グループ全体で1,910時間となり、わずかに及びませんでした。一方で、2022年度は全世界的な需要の回復や部材のひっ迫があり、販売や生産部門を中心に繁忙感が高まった中で、各部門が生産性向上を意識した取り組みを継続したことで、総実労働時間は大きくリバウンドすることなく、以前と比較して着実に改善傾向が継続しています。
・総実労働時間:2,009時間(2014年)→1,910時間(2022年)
・国内グループ全体
【取り組みの内容】
オムロンはメリハリのある働き方を促進するため、2010年からノー残業デーの設定や有給休暇の5日連続取得などの取り組みを行ってきました。2015年からは、取り組みのさらなる進化に向けて、以下のような施策を導入・実行しています。
①付加価値向上のための能力向上・獲得機会拡充
・E-learningの拡充
・高額外部講座受講支援
・社内勉強会支援
・業務時間外の会社主催セミナー開催 等
②多様な働き方による生産性向上のインフラ整備
・ホームオフィス制(自宅をオフィスとした在宅勤務中心の働き方)の導入(2022年度)
・副業制度の導入(2022年度)
・フレックスタイム制度コアタイム廃止(スーパーフレックスタイム制度の導入) (2021年度)
・在宅勤務導入 ~適用事由限定撤廃(2019年度)、上限日数撤廃(2021年度)
・サテライトオフィス活用
・時間有給制度導入 ~利用可能日数拡大(2019年度)
・短日勤務制度導入(2019年度) 等
企業理念にある「ソーシャルニーズの創造」を実現するには、従業員がワーク・ライフ・バランスのとれた毎日を送り、いきいきと働くことができる環境を整えることが大切です。今後も継続して働き方改革を進めていきます。
オムロンは、健康保険組合との共同事業(コラボヘルス)を通じた病気の予防や健康づくりを、積極的に進めています。定期健康診断にがん検診※を導入し、受診率の向上を図っています。また2022年度から健診情報等を社員自身が活用して効果的な予防・健康づくりを促進するヘルスケアプラットフォームを導入し、健康行動の改善につなげているほか、健康診断やレセプトデータ、社員へのアンケート調査等の健康データの解析などにも取り組んでいます。
オムロングループ(海外)各エリアでも社員の健康増進を狙い、社員の健康意識を高めるコンテンツを提供し、運動、メンタルヘルス、栄養、禁煙、睡眠について全社員が参加できるイベントを開催しています。また、社員のメンタルヘルスを重視し、メンタルヘルスに関するラーニングコンテンツを提供するとともに、カウンセリング窓口の設置、在宅勤務者への人間工学に基づいた机や椅子の提供など、各エリアで独自の取り組みを行っています。
オムロン(株)は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に5年連続で選定されました。経営理念・方針、組織体制、制度・施策実行、評価・改善のすべての項目で高い評価を頂きました。
また、経済産業省が健康経営に取り組む法人を顕彰する制度において、オムロン(株)をはじめとするグループ5社が「健康経営優良法人2023」に認定されました。なかでも優良な大規模法人の上位500社が選ばれる「ホワイト500」に、オムロン(株)およびオムロン ヘルスケア(株)は7年連続、オムロン エキスパートリンク(株)は3年連続、オムロン ソーシアルソリューションズ(株)は2年連続の認定を受けました。そのほか、中小規模法人部門では、オムロン太陽(株)が3年連続で認定されました。
オムロン(株)、オムロン ヘルスケア(株)、オムロン エキスパートリンク(株)は、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業として、スポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2023」に認定されました。
ウォーキングイベントの開催、始業前の体操、外部講師によるオンライントレーニングセミナー、そしてオムロンが協賛している「京都マラソン」の開催に合わせた運動イベント「オムロン バーチャルトレーニング with 京都マラソン2023」を開催するなど、国内グループ全社で運動機会の増進による運動習慣の定着を図っており、これらの取り組みが評価されました。